鳥取県にある国土交通省の多目的ダム。
型式はロックフィルで、どこにでもある無難なダムだが、洪水吐からの導流部に個性がある。
ロックフィルダムの導流部は、通常、滑り台のようになだらかな坂になっているが、このダムは導流部が階段状になっている。
一段ごとに減勢されるので、効率が良さそうな造りである。
堤体には比較的白い岩石が使用されており、奈良俣ダムや南相木ダムに通じる美しさがある。
わざわざリップラップの色をそろえていると思われ、ここらへんの仕事ぶりを見ると、さすが国土交通省のダムと頷いてしまう。
殿ダムの目的は、洪水調節と、上水道・工業用水の確保、そして発電。
この川の下流には鳥取市街があり、大雨が降ると度々町が水害を受けるという事があったらしい。
見学時に地元のかたにお話しを聞いた所、その水害の恐ろしさを語って下さった。このダムができて一安心という。
また、このダムの特徴は階段状の減勢工だけではない。
選択取水設備にエアロック式のものを採用している。
国内では羽地ダムに続く2基目の事例だと思われる。
見学日はまだ工事中で堤体に近づくことができなかったが、導流部を使っての放流を見学することができた。
色々素晴らしい設備を持っているダムなので、完成後の開放が楽しみなダムである。
下流正面より堤体を眺める。
白くて綺麗な堤体。
下流右岸側より堤体を眺める。
洪水吐からの導流部は階段状になっている。
カスケード式というらしい。
導流部のアップ。
角度を変えて。
放流しているのがお分かりだろうか。
非常用洪水吐は自由越流式らしい。
上流側(左側)は、何か特殊な造りになっていそう。
取材日は立入禁止で近づけなかった。
もう一つの見所である、エアロック式の選択取水設備。
ダム湖右岸より堤体を眺める。
中央に自由越流式の洪水吐。
その左に選択取水設備。
右に堤体。
常用・維持用と思われる放流設備。
まだまだ工事中だった。
下流の様子。
管理所。
こちらは下流側だが、インクラインらしきものがあった。
ダム湖の様子。
スペック
ダム名 | 殿(との)ダム |
ダム型式 | ロックフィル |
河川名/水系名 | 袋川/千代川水系 |
所在地 | 鳥取県鳥取市国府町殿地先 |
位置 | 北緯35度26分57秒 東経134度20分32秒 |
着工年/完成年 | 1985年/2011年 |
用途 | 洪水調節、農地防災/不特定用水、河川維持用水/上水道用水/工業用水/発電 |
堤高 | 75.0m |
堤頂長 | 294.0m |
堤体積 | 2,110,000立方m |
流域面積 | 38.1平方km |
湛水面積 | 64ha |
総貯水容量 | 12,400,000立方m |
有効貯水容量 | 11,200,000立方m |
ダム湖名 | 因幡万葉湖 (いなばまんようこ) |
管理 | 国土交通省 |
本体施工者 | 鹿島建設 |
水位
設計洪水位 | |
洪水時最高水位(サーチャージ水位) | EL 194.5m |
平常時最高水位(常時満水位) | EL 182.8m |
洪水貯留準備水位(洪水期制限水位) | – |
最低水位 | EL 163.0m |
放流設備
用途 | 形状 | サイズ | 放流能力 |
---|---|---|---|
非常用洪水吐 | 自由越流式 | ||
常用洪水吐 | |||
小容量放流設備 | Φ1.5m×1条 | ||
放流設備 | 大口径ゲート | Φ0.9m×1条 | |
放流設備 | 小口径ゲート | Φ0.35m×1条 | |
選択取水設備 |
アクセス
JR鳥取駅南口ロータリーより、国道53号線方面に南下。
駅を背にして進む方向である。
ひとつ目の信号である、県道26号線との交差点を左折。
そのまま3.82km走ると、県道31号線との交差点にさしかかる。
ここを右折。
あとはそのまま県道31号線を9kmほど走ると、右手に殿ダムが見えてくる。
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