国土交通省所管の多目的ダム。
クレスト部にラジアルゲートを5門、コンジット部にローラーゲートを2門備えているアーチ式コンクリートダム。
アーチの構造は、通常1軸で構成されているが、このダムでは3軸で構成されているという。
堤体の厚みが、他のアーチ式コンクリートダムより薄い事が特徴だろうか。
その薄さにもかかわらず、漏水量が非常に少ないとの事。良い施工だった事がうかがえる。
また、各水位にも特徴があり、制限水位が、「台風期制限水位」と「梅雨期制限水位」から構成されている。
この河川の梅雨期の流入量は、2山のピークになるため、この季節は台風期よりも水位を下げるということだ。
場所柄、流域面積は小さいように見えるが、お隣にある美和ダムに匹敵するほどの流域面積を持つ。
美和ダムと共に、天竜川の治水の要となるダムだ。
見学施設としては、小渋ダムインフォメーションセンターがあり、現在の水位や放流量、建設記録などを見る事ができる。
また、事前に申し込めば堤体内も見学できるので、ぜひとも訪れてもらいたいダムの一つである。

下流より堤体を眺める。
この写真ではわかりづらいが、ゲートはやや右岸寄りに設置されている。
(立入禁止の場所ですが、許可を得て撮影しています)

右岸より堤体を眺める。
手前の柱はエレベータ塔。
クレスト部には、非常用洪水吐のラジアルゲートが5門。
常用洪水吐はバーチカルリフト型ローラーゲートが2門。

クレスト部のラジアルゲート。
本番ではまだ使用した事がないという。
(もちろん、定期点検はしている)

常用洪水吐のバーチカルリフト型ローラーゲート。簡単に言うと、高圧ローラーゲートという事だろう。

天端を眺める。
本日は工事中で車両通行ができなかったが、通常は車両通行可能との事。
しかしながら、車両同士ではすれ違う事ができない。

天端より下流を眺める。
堆砂がすすんでいる。
現在、排砂バイパスを建設中らしい。

天端よりダム湖を眺める。

かわったかたちの水位表。
階段状になっている。
あの的にとどけば大当たり?!

ダム湖より堤体を眺める。
こちら側からだと、あまり良いアングルで望めない。

キャットウォークより堤体を見上げる。
常用洪水吐が魅力的だった。
ここに来るといつも思うが、クレストからの放流時、ここはどんな風になってしまうのだろうか。

プラムライン。
堤体のゆがみを測定する装置だ。
小渋ダムでは3本のプラムラインを有している。

キャットウォークより。
奥に見えるのが管理所。
昨年(2006年)完成したばかりとの事。

キャットウォークよりエレベータ塔を見下ろす。
このダムのエレベータ塔は、他に類を見ない珍しい設置方法だ。
下の水の部分は減勢工。
ここにも砂が貯まっている。
この砂は、減勢工内にもとからあったものらしい。

小渋第3発電所と堤体。
この発電所は、河川維持放流の水を使っているらしい。
(立入禁止の場所ですが、許可を得て撮影しています)
スペック
ダム名 | 小渋(こしぶ)ダム |
ダム型式 | アーチ式コンクリート |
河川名/水系名 | 小渋川/天竜川水系 |
所在地 | 長野県下伊那郡松川町大字生田 |
位置 | 北緯35度36分25秒 東経137度58分44秒 |
着工年/完成年 | 1961年/1969年 |
用途 | 洪水調節、農地防災/不特定用水、河川維持用水/かんがい用水/発電 |
堤高 | 105.0m |
堤頂長 | 293.3m |
堤体積 | 311,000立方m |
流域面積 | 288平方km |
湛水面積 | 167ha |
総貯水容量 | 58,000,000立方m |
有効貯水容量 | 37,100,000立方m |
ダム湖名 | 小渋湖(こしぶこ) |
管理 | 国土交通省 |
本体施工者 | 前田建設工業 |
水位
設計洪水位 | |
洪水時最高水位(サーチャージ水位) | EL 618.00m |
平常時最高水位(常時満水位) | EL 613.00m |
洪水貯留準備水位(洪水期制限水位) | EL 604.80m(7月21日~10月5日) |
洪水貯留準備水位(洪水期制限水位) | EL 592.00m(6月10日~7月20日) |
最低水位 | EL 588.70m |
放流設備
用途 | 形状 | サイズ | 放流能力 |
---|---|---|---|
非常用洪水吐 | ラジアルゲート | W9.500m×H5.983m×5門 | 1,520m3/s |
常用洪水吐 | バーチカルリフト型ローラーゲート | W3.5m×H3.862m×2門 | 640m3/s |
発電所使用水量 | 小渋第一発電所(長野県) | 8.00m3/s | |
発電所使用水量 | 小渋第三発電所(群馬県) | 0.88m3/s |
アクセス
中央自動車道松川ICより、県道59号線を伊那大島駅方面に直進。
JRのガードをくぐり、500mほど走ると県道は左、右、左のトラップにさしかかる。
ここは県道にそって、左右左へ。
1.5kmほど走ると、県道18号線に合流する。ここはそのまま合流。
天竜橋にて天竜川を渡るとT字路にさしかかる。
県道18号線は左折するかたちになるが、ここは右折。
県道59号線に入る。
あとはそのまま小渋川に沿って直進するのみ。
5.38km走ると、小渋ダムに到着する。
インフォメーションセンターがあるので、こちらに車を停めて見学するとよいだろう。
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