北海道開発局が所有する多目的ダム。
堤高32mの重力式コンクリートダムで、洪水調節の他、上水道用水、かんがい用水、工業用水の確保および、発電を目的としている。
堤高の割には堤頂長は長く、550mもの長さをほこる。
河川の中流域に存在する典型的なダムのたかちであるが、デザインは一般的なものとは大きく異なる。
家の屋根をモチーフとしているようなデザインで、遠くから見ると、家々が立ち並んでいるように見え、夜間はここが本当に家だと思ってしまう人もいるほどだ。
わたし的には、このデザインは、郊外にあるブティックホテルに見えて仕方がないか。
皆さんは何に見えるだろうか。
放流設備は、非常用洪水吐として高さが無いローラーゲートが5門、常用洪水吐として、ローラーゲートが7門装備されており、この他に、夏季の洪水や、発電が停止された際に使用するローラーゲートおよびフラップゲートが1門ずつ装備されている。
この2つのゲートは、同じ場所に設置されており、水位が低い場合はフラップゲートを、高い場合にはローラーゲートを使用すると思われる。
また、このダムの魚道も特徴的だ。 一般的な階段式魚道なのだが、魚道の上端であるダム湖側の部分はスイングシュート式という方式で、ダム湖の水位に合わせて上下する構造をしている。
魚道を間近で見学できる造りになっており、遡上する生物を真上から眺めることができる。
深刻な問題としては、ダム湖の堆砂率であろう。10年にして堆砂率が200%を越えてしまった。
この原因のひとつとして、2003年に発生した台風10号により、予想を超えた大量の土砂が流れ込んだことがあげられる。
いずれにせよ、何かしらの手を打たないとダムの運用に差し支えがあることは事実であろう。
その他、色々あるダムだが、魚道が見学でき、資料館もあるダムなので、このエリアに訪問の際は、ぜひ訪れて頂きたいダムである。
下流ほぼ正面より堤体を眺める。
河川が右にカーブしているため、土手からでもこのアングルで見える。
下流左岸より堤体を眺める。
手前の5門は非常用洪水吐、奥は常用洪水吐。
上流左岸川より堤体を眺める。
このデザイン、まるで民家が建ち並んでいるようだ。
減勢工の様子。
天端を眺める。
自動車での通行不可。
右岸側の天端。
左の建物は常用洪水吐のゲート機械室。
右の建物は常用洪水吐の予備ゲート群。
常用洪水吐を右岸下流側より眺める。
非常用洪水吐を右岸下流側より眺める。
右岸非常用洪水吐。
上部にローラーゲート、下部にフラップゲートという贅沢な造り。
右岸に設置されている魚道。
魚道折り返し部より堤体方向を眺める。
この部分がダム湖の水位により上下に動く。
ダム湖の様子。
堆砂率約200%。建設後10年でこの値になってしまった。
スペック
ダム名 | 二風谷(にぶたに)ダム |
ダム型式 | 重力式コンクリート |
河川名/水系名 | 沙流川/沙流川水系 |
所在地 | 北海道沙流郡平取町字二風谷 |
位置 | 北緯42度37分43秒 東経142度08分57秒 |
着工年/完成年 | 1973年/1997年 |
用途 | 洪水調節、農地防災/不特定用水、河川維持用水/かんがい用水/上水道用水/工業用水/発電 |
堤高 | 32.0m |
堤頂長 | 550.0m |
堤体積 | 276,000立方m |
流域面積 | 1,215平方km |
湛水面積 | 430ha |
総貯水容量 | 31,500,000立方m |
有効貯水容量 | 26,000,000立方m |
ダム湖名 | 二風谷湖(にぶたにこ) |
管理 | 北海道開発局 |
本体施工者 | 西松建設・岩倉建設 |
水位
設計洪水位 | |
洪水時最高水位(サーチャージ水位) | EL 48.00m |
平常時最高水位(常時満水位) | EL 45.00m |
洪水貯留準備水位(洪水期制限水位) | |
最低水位 | EL 40.00m |
放流設備
用途 | 形状 | サイズ | 放流能力 |
---|---|---|---|
非常用洪水吐 | ローラーゲート | W11.0m×H2.5m×5門 | 1,883m3/s |
非常用洪水吐 | ローラーゲート | 1門 | |
非常用洪水吐 | フラップゲート | W7.0m×H2.5m×1門 | 343m3/s |
常用洪水吐 | 高圧ローラーゲート | W6.0m×H8.0m×7門 | 4,848m3/s |
コメント