日本初の、日本人の手だけで造られたアーチ式コンクリートダム。
初期型のアーチ式コンクリートダムということだけあり、とてもシンプルな造りだが、それが逆に古風で美しい。
クレスト部は自由越流式の洪水吐を8門備え、ここから流れ出る水流は非常に美しい。
毎年5月には、このクレスト部から観光放流をおこなっているので、ぜひ見学してもらいたい。
また、常用の放流設備としては、堤体コンジット部にフィックストコーンバルブを備えている。
その他、堤体付近の左岸側にローラーゲートを備え、流路はトンネル式となっている。
実は、このトンネル式の放流設備には、主ゲートしか無かったらしい。
最近のダムでは、通常、主ゲートと副ゲートの2枚構造になっているが、このダムは1枚のみの構造だった。
これではあまりに危険ということで、2002年に副ゲートが増設された経緯をもつ。
とてもシンプルな造りのダムだが、それなりの設備を持つ、見所の多いダム。
堤体の曲線ラインが非常に美しいので、お近くにお立ち寄りの際は、ぜひとも見学してもらいたいダムである。
下流より堤体を眺める。
クレスト部に自由越流式の洪水吐が8門。
最近施工されたアーチ式とは違い、放流時の水流は堤体に沿って流れ落ちる。
これが非常に美しい。
高所より堤体を眺める。
ノッペリとしたシンプルさが、逆に、美を感じさせる。
堤体とダム湖。
ダム湖は細長い。
上流より堤体を眺める。
シンプルなクレスト部だが、コンジットバルブの副ゲートや、選択取水設備を備えている。
天端を眺める。
徒歩のみ通行可能。
夏休みということもあり、とても賑わっていた。
自動車は、500mほど手前の駐車場に停める。
奥の水色の構造物が、コンジットバルブの副ゲートと思われるもの。
手前の構造物は、選択取水設備だと思われるもの。
オリフィス部のフィックストコーンバルブ。
ノッペリとした堤体に、さりげなくついている。
堤体付近の左岸にある、常用洪水吐の予備ゲート。
これは最近新設されたものだ。
天端より下流を眺める。
いかにもアーチ式コンクリートダムが建設できそうな地形だった。
天端より減勢工を眺める。
変わった形の減勢工。
流量が少ない時は、減勢工の切れ目から水が流れ出る。
人間運搬用のインクライン。
赤く見える橋桁は国道。
この部分からインクラインが繋がっている。
スペック
ダム名 | 鳴子(なるこ)ダム |
ダム型式 | アーチ式コンクリート |
河川名/水系名 | 江合川/北上川水系 |
所在地 | 宮城県大崎市鳴子温泉字岩淵 |
位置 | 北緯38度45分17秒 東経140度42分17秒 |
着工年/完成年 | 1951年/1958年 |
用途 | 洪水調節、農地防災/不特定用水、河川維持用水/発電 |
堤高 | 94.5m |
堤頂長 | 215.0m |
堤体積 | 180,000立方m |
流域面積 | 210.1平方km |
湛水面積 | 210ha |
総貯水容量 | 50,000,000立方m |
有効貯水容量 | 35,000,000立方m |
ダム湖名 | 荒雄湖(あらおこ) |
管理 | 国土交通省 |
本体施工者 | 鹿島建設 |
水位
設計洪水位 | EL 257.0m |
洪水時最高水位(サーチャージ水位) | EL 255.0m |
平常時最高水位(常時満水位) | EL 254.0m |
洪水貯留準備水位(洪水期制限水位) | EL 244.5m(7月1日~9月30日) |
最低水位 | EL 231.0m |
放流設備
用途 | 形状 | サイズ | 放流能力 |
---|---|---|---|
非常用洪水吐 | 自由越流式 | W11m×H4.95m×8門 | 1,584m3/s |
常用洪水吐 | トンネル洪水吐ブレートガーダ式鋼製ローラゲート | W4.957m×H9.00m×2門 | 700m3/s |
低水放流設備 | ハウエルバンガーバルブ | Φ1.05m×1条 | 19.8m3/s |
利水放流設備 | ボールバルブ | Φ0.3m×1条 | |
発電所使用水量 | 新鳴子発電所(東北電力) | 21.00m3/s |
アクセス
東北自動車道古川ICから、国道47号線を鳴子方面へ走る。
28.4kmほど走ると、「鳴子温泉郷」に入り、国道108号線との交差点にさしかかる。
この交差点を右折、国道108号線に入る。
鳴子大橋で江合川を渡ると、道は登り坂になる。一気に鳴子ダムの堤高分を稼ぐかたちだ。
2.5kmほど走ると、鳴子ダム天端に通じる道が、左手に分岐する。
案内板があるので迷うことはないだろう。
ここはこの案内板通りに左折。
少し走ると、鳴子ダム手前の駐車場に到着する。
この駐車場に車を停め、ここからは徒歩。
500mほど歩くと、天端に到着する。
なお、この道は、冬季と17:00以降は通行止めになるので注意されたし。
また、この道に入らず、国道をさらに進むと、鳴子ダム管理所が見えてくる。
管理所付近に駐車できるスペースがあるので、ここに車を停め、こちらからの見学もおすすめする。
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